ナツノムジナインタビュー後編となりました。今回はボーカル・ギターのアグニトモヒコへの単独インタビュー。インタビューには新たに10,10,10を交えて、地表の冷えに間に合うようなものを。
by 101010, heye
and aguni
8月某日、Skypeでつながれた各部屋、等量の音と光だけがインタビューを繋いでいた。
画面を見る限り、アグニトモヒコ(ナツノムジナ)はよくわからないドリンクを飲んでいる…当然酒であるだろう。だから匂いだって少しは伝わってくる…
張り詰めたビット空間で、まずは10,10,10の前インタビューへの文句から—-
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沖縄のバンドじゃないか
前のインタビューで、ナツノムジナの歌詞とかが沖縄っぽくないって言ってて、あれがよくわからなくて。俺には十分沖縄っぽく感じてたのだよな。
あ….あれは一般的な、その…民族的な沖縄のイメージではないってこと。
そうそう、沖縄って聞いてイメージする民族的な音とバンドの掛け合わせとかとはずれるよね、っていう… 例えばHYとか high and …とかとは違うよね。もっと、例えば太陽をモチーフとかにしてるって言ったって、底抜けに熱い、っていうのとは違う、うだるような暑さとか..そういうのが音とかにも出てると思って。
確かにシーサーとか…真正面から名詞として強烈な沖縄感が出てくる訳ではないけど、センテンスのレベルで沖縄を感じさせるものはなんだかんだ多い。台風がまた来るみたい(backsheet/ナツノムジナ)だとか、PVの映像も複数回に渡って海を予感させるような水のイメージが出てくる。
沖縄には長いこと住んでて普通に生活してたから。
沖縄は実は常に直射日光がかんかんとしてという感じではなくて、雨が降っている時の空気感とか、どっちかというとそういう時の方が多くて。だから、そういうのの方が出てるというか、 皮膚感覚ではこっちがリアルなんだっていう。—意外と日光がバリバリじゃなくても短パンとか。
PVになってる「プロペラ」も、 あれはなんかの比喩なんじゃないの?みたいなことを言ったんだと思うけど、やっぱり生活感に基づいた何かがあって。
:「プロペラ」っていうのは学校の…換気扇のことで。
高校の時って夏だと絶えずエアコンがかかってて、ずっと涼しいイメージがあって。冷房とかクーラーとか一緒に生活してるなって。そこでは換気扇は壁に張り付いてて、熱気が噴き出されていて、そうすると、学校の壁によってできてる内と外の境界線…. そこが、外の空気と中の空気が、プロペラで曖昧になっていく、っていうイメージがあって…。 …それと、熱気に当てられて、意識が朦朧として曖昧になって気持ちがいい、っていうイメージが重なった、っていう。
: 沖縄を象徴するようなわかりやすいオブジェクトを押し出すというよりは、まずそういうのが散らばった現実とか環境があって、その中で人間が感じたことって感じだよね、それはそれで俺らには書けないんだろうし。名詞の数で言えば、意外と歌詞の中で沖縄にしかないようなものって少ない、当たり前なんだけど、それは。
:そういうエスニックな”物”の感じはあんまり準備してないかな。
:だから俺が思った違和感、そういう沖縄っぽくなさ、はそういうところからきてるのかな、って感じだな。
聞き直してよかったね。 関連して言うと、これは最新のEPには入ってないんだけど、過去曲であるところの「渚にて」の、
“戦争が 兵隊が 灯台が 火の鳥が”
っていう歌詞が自分には印象的で。こういうテーマ、戦争、兵隊、とかって、俺らが沖縄って聞いて思い浮かべる時の後ろから刺す太陽みたいな何かであって。沖縄の人に歌われる結構どきっとしてしまう…
渚にて、とかは時間がめちゃくちゃになって、昔の先祖とかも時間が止まって、全部同じ場所にいるというか。
いわゆる居場所が台風の目に入るときの凪の状態っていうのは、風とか時間とかが全部止まって、過去現在とかが全部いっしょになって、そういう場所が生まれた、みたいなことを表現した。
じゃあスタイルとして出そうとしてるというよりは、肌感覚なのか。
カフェイン入ってるから。
CM: カフェイン+スポーツ+炭酸!おいしい!さわやか! P O W E R A D E
EPで得たもの
うん。レーベルからの流通の話とかもあったんだけど、とりあえず自分たちでやってみようという気持ちで作りました。
これを出してよかったことは確実にあって。
というのは、ナツノムジナの音楽がこうだ、っていうのが、やっとわかった。曖昧さ、その、「曖昧」ていうのを打ち出していいのかも、曖昧だから…難しくて自信がなかったんだけど、聞いてもらった人に 「沖縄の湿った、曖昧な、鬱屈した夏」みたいなのを感じたって言ってもらえて。それなのかもな、って思えて、だから..出してよかったかなって思ってる。方向としては、次に進めてる感じというか。
音の作り方
メンバーから聞いた話を総合すると、曲の作り方としては、アグニがだいたい元になる曲を持ってきて、それをみんなでみんなでジャムってディティールを作り込んでいく、みたいな作り方だって聞いて、それは時間がかかる作り方なんじゃないかな?って思うけど、それは続けていくのかな、まあわかんないか。
アグニ わかんないけど…しんどいっちゃしんどいけど… とりあえず一枚出してわかったから、いろいろやっていきようがあると思ってて、今はみんな忙しいけど、就活とかで、さすがにだんだん細分化していくうちに、ナツノムジナが音楽をやるっていうのは、確実にわかっているかな、って。
:小学校のころから、奈良と一緒にスタジオ入ったりしてた。とにかくバンドをしよう、って気持ちで。小学校4年くらいの時に東京事変とくるりにはまって、その当時は事変のキーボードがカッコいい!と思ってた。一応俺はピアノ習ってたらから、「俺がキーボード弾くから奈良はドラムやってよ」って感じで楽器の練習は始まった。二人とも家が近かったから、「遊ぶ」って言うのが例えば鬼ごっことかじゃなくて、「音楽を聴くために遊ぶ」になっていた。
大人になったら鬼ごっこより音楽聞く方が楽しいし、大人びていたんだろう…。そうやって集まって始まっていった「バンド」という形態は、こういったらなんだけれど、利点や強みっていう部分が何だろう、って思う時がある。もちろんそれがあることは分かるんだけれど、結構「バンドで出来るタイプ」と「バンドで出来ないタイプ」の人間がいて、音楽を始めていく中で、その人間性で方向性は二分化されている。それでもバンドは主流な形であるから…たとえば今後粟国のソロ活動とかはあるんだろうか。
:ない。
, なるほど、そうしたらバンドってのが強固にある、ってことか。
:ソロだと、めちゃくちゃポップになっちゃう。俺一人だとオリジナル・ラブになっちゃう。(笑) そういうことをしたい訳じゃないから、みんなと一緒にやってる。
窪田(Ba.)が曲にもたらしている影響が結構あるのかな、といつも話を聞いていて思う。例えば彼のプログレ好きが曲にどの程度影響してるのだろうか?
:曲とかは、俺の中では「窪田のまなざし」が内面化されている。例えば俺がオリジナル・ラブライクな曲を持っていく…持って行ったとしてもみんな乗るわけがない。乗るわけがないことを分かっているから頭を振り絞って違う感じにしていく。これだとどうだろう、これなら、という風にぐちゃぐちゃにしていく。
粟国の体感としては一人で作っているときもメンバーのまなざしがあって、一緒に作っているという風にも言えるってことですね。
メンバー各々好きな音楽は違うけれど、プログレ的な要素は全体的に影響していると思う。でも、もちろんそういうことは言える。