<課外>ガンディと内田るんのトーク・ログ

ガ→ガンディ(マゾヒストをカミングアウトしてるパンクミュージシャン、ロックバンド「神の国へようこそ!!」「悲鳴」ボーカル。twitter: @ryuro)

る→内田るん(フェミニストを公言してる本誌記者。)

ガ:るんちゃん今日はありがとう。すごく面白い話をたくさん聞かせて貰って感謝してるよ。出てきてよかった!

る:そんなに引きこもってんのかい?こちらこそ楽しかったよ!ご飯とお茶、ご馳走さまでした!

ガ:歌作って絵描いたら精一杯でのう……。

る:そうか、並行して歌も作ってんのか。

ガ:バンドが一番大事だからね、やっぱり。絵は仕事だから……。                                        

る:歌はスタジオで作ったら?

ガ:いやーなんか時間が拘束されると出て来ないんだよね。

る:あ、逆なんだね。私と。私、部屋で勉強できなくて。

ガ:るんちゃんは制限時間もうけられると出てくるのか。

る:歌も、制限時間ないと形にならない。妥協するポイントが見つけられない。妥協しないと絶対完成しない。

ガ:るんちゃんは散逸した情報がすごいんだな。自分でもまとめ切れないエネルギーというか。

る:てか頭の中にあるものを全部取り出してって、今日の原画展(アニメ「攻殻機動隊」の原画展)みたいなことは、修行も練習も足りないから無理。1%でも、頭の中からサルベージできたら、それが才能と言われたりするんだなって。

ガ:あれはやっぱ修行の賜物だよね。果てしないけど、ここと必ず繋がってる道の先の賜物だなって。

る:毎日毎日絵を描いて描いて、それで20~30%出せたら天才と呼ばれるレベルになるのではないかと。継続こそ力なり~。

ガ:そうだねえ、無意識は海で作品は飛沫と思うよ。あるいは…そうだな、『海の幸』というか(笑)。

る:そうそう。ネットの海から情報まとめてまとめサイトにして食べてる人もいる。全ての人類の叡智もアイデアも、本来は共有してる。無意識の海で。

ガ:すげえよな、なんであいつらテレパシーみたいに……(笑)。おれも出来るはずなんだけどなあ。

る:そこはまた、アクセス出来てもサルベージしてパッケージングまで出来ての手に職だから。

ガ:そうなんだよねえ 刺身みたいにね、エイっとさばいて……あんまり時間かけると腐るから、るんちゃんの言うように時間制限をかけるのも一つの手なのかもしれない。

る:この、パッケージングが意外と一番難関かもね。それこそ、ディレクションだけは他の人に委ねないと出来ないことが多い。

ガ:そうか、そこで編集が必要になるのか。なるほどな。

る:私も小説書くのは増田さんから(漫想新聞で)与えられた課題としてやったから。

ガ:あー……。

る:小説なんて書きたいと思ったことなかった。でもフィクション書くのはなかなか楽しい。

ガ:よし、るんちゃんにはバシバシ宿題出していこうか。

る:半分以上はノンフィクションというか元ネタになってる人いるし。

ガ:おお……誰が登場する(犠牲になる)のだろう、、、

る:ははは、ガンディも出さなきゃ。

ガ:やめれえええええええ(笑)

る:ドMの美青年、くらいにしとくから!

ガ:穴があったら入りたいやら入れられたいやらのM男。

る:最高のパンチラインありがとう!使うしかないな!

ガ:ついノリでいったら出演決定かい……(笑)。

<お金の話>

ガ:おれ初めて会社辞めた時に、「あっ、おれ全然安定した暮らしとか、絵に描いたような豊かさって関心ないんだ!」って気づいてビックリしたなあ……。

る:意外と自分をそのへん平凡に設定してたりするよね。自分が扱いやすいお金の規模ってのも人それぞれだなと思う。
私は小銭をやりくりするのは好きだけど、1万円とか持ってるとどんどん使ってすぐなくなっちゃう。工夫する気が起きない。今日は財布に500円しかない!どうやって楽しく過ごそう!?とかはわりとクリエイティブにとらえられる。逆に大きいお金も、1千万くらいあったら何やって活かそうかなって工夫できる気もする。もっとクリエイティブなお金での遊び方を考えれるようになりたいなー。

ガ:あ、わかる(笑)。あんま欲しいものなんてないしね。素敵なものが欲しいけどあんまり売ってないから、好きな歌を歌う~!

る:私は欲しいものいっぱいあるけど、使わないと意味ないものが多くて、「使う力」が私にはまだまだ足りないなーと思う。無駄遣いばっか。人付き合いに使うのは良いけど。
そんな中で漫画はコスパ高いなーと。漫画喫茶、千円で6時間とか、すごい読めるし楽しめる……漫画はいいなー仕事としても。

ガ:確かに漫画はためにもなるしコスパが良い。金って使う能力まで含めてだから、宝クジみたいな金の持ち方すると破滅するだけと思うわ。結構最近そのことは考えてて、自分の身の丈の金の容量が小さくても、それを認めて行こうと。

<お金の使い道>

る:宝クジ買うと、取らぬ狸の皮算用で色々やりたいこと思い浮かぶので、そういう遊びとして買ってる。100万円あったら、MCビル風とか若いモンたちを連れて新幹線で日本各地をライブツアー組んでうまいものでも食べさせたろーとか。

ガ:ビル風に使うのかよ(爆笑)(MCビル風とガンディは大学の同級生)

る:自分のために使う金は、本当に必要なら両親に頼めばある程度は出してくれると思うけど、他人のために親の金は使えないじゃん。でも他人のために使うのが一番楽しい気がする。そのへんも課題。自分に投資することが見つからない。とりあえず勉強と健康と社交に使ってる。

ガ:プロデューサーみたいだな。

る:プロデュースしかやりたいことない……。

ガ:それいいな。ぜひプロデュースしてくれ。金用意するからプロデュースしてくれの勢い。おれ音源作らなかったからなあ……。レーベルオーナーになって運営をるんちゃんに丸投げ的な。

る:プロデュースするよ~?今は無償でやってるよ。「ともちゃん9さい」さんとか。単に音源作るの勧めて、どういう風に出すか相談乗ってるだけだけど。カウンセラーに近いかんじ。「どういう目的で、どういう層に向けた、どんなかんじのアルバムを、どのくらいの予算と期間で作ろうか?」って。

ガ:あ~すげー大事だそーいうの。自分のこととなると、とんと……という感じだからな。編集者なしに物書きはできないみたいなもんだろうな。

る:こんなのでビジネスになるかな~なったらいいけど。とりあえず今やってる、ともちゃん9さいさんの「腐乱ちゃんと恨乱ちゃん」てユニットのアルバムが完成したらまた考えてみようかな。編集に近いね!たしかに!

<芸術は商売になるのか>

る:面白いものやちゃんとした仕事をお金に換えるとか、「売る」ってのは、また別の才能、というか感覚が必要だからなあ。私は良いものを手に取りやすい形で世に出したり、人に伝えていくことはしたいけど、消費者からお金を取るってイメージがあまりない。

ガ:それが正しい「芸術を売る」って行為な気がするな それに対するオマケというか、お布施というかでお金がついてくる感じというか。そうでない儲け方は結局なんだかんだでどっかに消滅しそう。

る:そもそも音楽とか芸術とかってお金を稼ぐ意義があやふやでさ。生活費が今必要な人のためにプロデュースするなら、「こんだけ必要」ってのに合わせてまた「売り方」考えることも出来るかな。そうだな、逆から考えないとな。
税金とかのことも考えて一番控除とか受けれる中でぼちぼち食える月収がいくらとして……それをどの程度の頻度で活動したら得られるか。とかをプロデューサーが考えていかないとダメなのかも。

ガ:ああ、そうだな、そうか。続けていくためにどのくらい必要なのか、って発想だよね。

<世代のカルマと3.11.>

(ともちゃん9さいさんの動画を観て、やくしまるえつこ以降の若い人のこういう表現って垢抜けてるよね、という話題から)

ガ: なんかカルマ抜けしてるよね。なんだろ。テク大事みたいなことを友達のイベントの打ち上げで24歳の黒縁眼鏡ギターボーカルが言ってたなあ……。その点こ の人(ともちゃん9さい)はあるよね。カルマが。技術をより大事にする時代がやってきてるのかなあと思うこともあるよ。(中略)ここ10年 で変拍子が当たり前になったり、邦ロックでプログレ的なものがガーッときた感じはあるよな。プログレは嫌いじゃないんだけれど、ぼくは技術偏重の音楽はあ んまり惹かれないかもしれない。恋愛で性格よりもルックスを重視する人みたいで。でもそんな風に考える自分が時代遅れというか、旧世代の人間なんじゃない か、って……。
(中略)

ガ:その、21世紀になって、いわゆる「終わらない日常」が始まって、そん中で自我ってものなんて融解しちゃって、もうカルマとか持つこと自体が下らないってのがその人たちの感覚なのかもしれないが、まだそれを身体感覚で理解できない……おれがおっさんだからだな(笑)。

る:なるほどな……そんな空気があるのだね。同時に3.11.以後の「終わらない非日常が日常」って人も多くなったわけじゃん。

ガ:そうか、そうだな。正直3.11のときおれが感じてしまったのは、語弊があるから言いづらいんだけど……「なんだ、結局世界は終わらないのか」というか……日本壊滅しないじゃん的な。

る:バンギさん(西洋魔術師・翻訳家)言うところの、合意現実の無効化。分断か。ポストモダンが遂に大衆に迫ってきたってアレ。

ガ:おれの場合は逆に、もう永遠に最後の一発は来ないという気持ちを強くさせられてさ、
なんか一所懸命知識人や政治家が、あれを中心に日本をもう一回まとめようとしてるのが白々しくて。

る:こないだも話したけど、人間は、集団でひとつの生命だから、一部が大きく欠けても、全部が壊滅しない限りは終わらない。

ガ:そうだなあ、そうだよな。全滅という発想自体が幻想なんだよね。あの戦争の、追憶なんだろう。

<近代とは劣等感>

る:(3.11.で)人間は平等で、幸福になる機会が与えられ、「個人の命は地球より重い」幻想はかなり打撃を受けた気がする。

ガ:そうだね。今やみんな違うからね。ずっと分かってたことなんだろうけどね。

る:大きい単位で見ると、(日本って)黒船から引きずってる劣等感をどう払拭するかずっとアレコレやってるかんじだよね。

ガ:まあ近代とは劣等感とすら言い換えられそうなもんだからな(笑)。どこの国でも。

る:その通りかも!そしてようやく脱・近代、するべき時代の到来なのでは。

ガ:すると劣等感を原動力とするロックはもはや時代遅れなのかもしれない……。

る:そう考えても、垢抜けた若者たちの、一見空っぽだけど、シビアな感じもするとこに未来感じるよ。

ガ:そうか、敏感な人はやっぱそう感じるのか。

る:いや、若い人の何考えてるかわかんなさに勝手に希望押し付けてるだけ。てかロックはだいぶ前から時代遅れなのでは。ジャンルで言うと。でもブルースもジャズもちゃんと生き残ってそのまま発展してるし。

ガ:古典芸能ならやりたくはないなあ(笑)。

る:ジャズは古典芸能じゃないぞ!

ガ:あれは前衛(笑)。

る:てか古典芸能と呼ばれるものも、今の若者が繋いでるんだから、リアルタイム進化してるカルチャーだよ!

ガ:正確には、大衆音楽じゃないものはやりたくない、かな。

る:大衆音楽なんて、君やったことないじゃない!!!

ガ:なにを!いつだって大衆音楽のつもりですよ(笑)。

<大衆音楽とは?>

る:湘南の風をカラオケでフルで歌えるようになってから言え!

ガ:ひどい(笑)! 
いやなんというか、言うなれば「今、ここにある現実」をするのがおれの中で大衆音楽なのかな?

る:大衆音楽、とまで言うなら湘南の風、せめてスキマスイッチあたりでしょ。

ガ:え~と……(笑)。いやなんかね、「まだ誰も聞いたことのない音楽を!」とかじゃなくてさ、昔ながらの伝統を守るためにやるわけでもなくてさ、今、ここにある現実かな、それやりたいってことなの、大衆音楽じゃないのかなこれ。なんか、ポップさ、ってやつだとは思ってるんだけどね。

る:ガンディくんのやってることは、アンダーグラウンドでアバンギャルドなパンクやってって、同時代の最先端の若者たちに共感を得ることをやりたい、というように見えるよ。

ガ:そんなつもりは全くないよ、それにおれもういい年したおっさんだしな……(笑)。

<若者の定義>

る:おっさんかどうかは年齢じゃねえぜ!ガンディはインテリ志向なポストロックとかはやりたくなさそう、とは思う。

ガ:やりたくないねええええ。全くそう思います。「若い」というのはるんちゃんみたいに、垢抜けた若者たちの、一見空っぽだけど、シビアな感じもするとこに未来感じることが出来る人のことを言います。インテリ志向のポストロックとか一番馬鹿にしてるからな。おれは湘南乃風の方が100倍イケてると思ってるよ。本気で言っているんだよ。

る:未来が無制限にある感覚を持て余して、迫り来るいろんなリミットに怯えて、自分にしか出来ないことを探してる人はみんな若者なんじゃないかなー。

ガ:お、いいこというね。「未来が無制限にある感覚を持て余して、迫り来るいろんなリミットに怯えて、自分にしか出来ないことを探してる」ツイートしとこうか。

る:やめて、自分の小説に使い回します!

ガ:よし……(笑)。

る:私は若者を見て、ライバル視する感覚のあるガンディくんのが若いと思うぜ! 

ガ:ありがとう(笑)。

<ポスト若者>

る:私はもう勝てる勝てないじゃなくて、若者らをどう活かすかサポートするかを考えてるから、もう若者じゃない。ポスト若者……。

ガ:ポスト若者!新しいな……いい言葉(笑)。ニコ生チャンネルとか持とうぜ(笑)。

るん ありがとう!17歳の自分が持ってた勢いとか可能性とかのほとんどを捨てて今の自分を選んだわけだから、その失った分は明らかにリアルタイム若者と比べた時に少ないわけで。
(中略)

ガ:そうだなあ……。自分が失った時間については時折考えるわ。

る:失った分は何かを得てるはずなので、絶対量は変わらないはずだけど、あの頃持ってたエネルギーとは質の違うものになったのは確かだなと。

ガ:うん。ちんちん花火(※powerという20歳前後のメンバーを中心としたクルーの子)には若さを感じる(笑)。でも、多分今のおれには今なりの変質したエネルギーの音楽があると思ってるしさ。

る:で、当時は持て余して使いこなせなかったけど、失った分、今のちんちん花火とかにはどんなアドバイスや後押しが必要か、欲しいかとか、イメージしやすい。もちろんそれが本当に彼の望むものを手に入れるための的確なものかはわからない。

<元・若者>

ガ:今ね、すごく自分が矛盾してたことに気づいた。

る:おや?

る:おれ、アドバイスとか、出来るほど偉い人じゃないって、いつも思って、なるべく喋らないように、特に若い人相手には、むしろそいつから盗もうと思って聞く方に回ろうとしてたんだけれど、でも、同時にいつも思うのは、あの頃一言でもアドバイスしてくれる親切な大人がいたらどれだけ変わっただろうとか、まあ全部ないものねだりなんだけど……そういやそうだった。そう思ってたはずなのに迷ってる人にアドバイスを言わないのはそれも片手落ちだな、と思った。

る: そうか、大人に囲まれてるように見えたけど、ガンディのやりたいことそのものに迫るアドバイスをくれようとか踏み込んできてくれる人はいなかったのか。ま たは、ガンディは自分で追求できる人間だから、フワフワしたアドバイスでは耳に入らなかったのかもよ。若者に、自分の出来なかったことや失ったもの、あの 頃欲しかったアドバイスなんて押し付けるのはエゴかなとも思うけど、彼が私のようなポスト若者世代と付き合うのを選択してることを対等に尊重すると、それ もまたアリかなと。ちん花たちも選ぶ権利があるわけだから。

ガ:そうなんだよな。そう。うまく言えなかったけど、るんちゃんの発言からそれを感じたんだ。「彼が私のようなポスト若者世代と付き合うのを選択してることを対等に尊重する」その態度を、おれこそ尊重してなかったのかもしれない、と思った。まあ、(円盤店長の)田口さんとか、(ロックバンド我々の)コマツさんとかの、アドバイスではなくて世間話?かな?にはものすごく影響を受けてたりするけれどね。

(世代が下の若者に自分の考えを語ったり年長者として色々教えたりすることに対して責任を持とうとしすぎるのは結局、相手の人格や選択権・決定権を認めてないからではないか、という話から。)

ガ:なんか、一夜だけ一緒に過ごした女と数年後に再開しても全くしゃべらない的な。凄まじき寒さがあるな(笑)。

る:「やり捨て」概念と似てるね。「やり捨てた」って思ってるのは本当はどちらかな?という……。

ガ:そういうの、そういうことちゃんと言ってくのが正しいフェミニズムだと思うよ(笑)。男の潜在的無意識を叩き壊していきましょう……ぐうの音も出ないわ(笑)。

ガ:僕の場合、「悲鳴」(ガンディのバンド)でかつて表現していたものと同じことを今またやるのは全然正しくないな、って感じていて。悲鳴のおれはよくも悪くも「おれ」のことばかり言っててさ、なんか子供が駄々こねてるみたいでダセェな、って今の自分からは思うところがあって、正直、作品というものは世に出した時点でもう自分のものではないと思っているのであまり語りたくないんだけれど、そのことに今の言葉はぐっさぐさ刺さりました。

る:あ、なるほど!そう、聴く側も選択してるわけだから。

ガ:そうだよね。それを否定したら聞いてくれてた人に対して一番失礼でさ、それは解ってるんだ、解ってるんだぜ(笑)。

る:ガンディの「おれ!おれ!」が最高にクる!って人がいて、winwinの関係(嫌いな言葉だけどあえて使ってみる)がそこに発生してるから、社会的に「活動してる」と見なされる。

ガ:そうだな。……いやああああああああああああああああああああああああああ(そうだな、と肯定してみた直後に反動が来た例)

る:あはは!

<幻想の相互関係>

る:それこそSMの関係じゃん、サドがマゾを虐めるのは、マゾが求めてるから成り立ってるわけで、サドが一方的にマゾを蹂躙してると見るのは何もわかってない子どもの感覚ってのと。

ガ:あ、そうだ、そうなんだよ。「性的なこと」を、「見苦しくやった」、という意識にすごく近い。あの晩、あのベッドしたことを、あの人に、実は軽蔑されてたんじゃないかとか……自信をなくしてんのかおれ。なんだこれ。人生相談みたいになってきた。

る:ほんまや。

ガ:弱さは誘惑だからね。『弱さはあらゆる深いものを愚弄する』、のだからね。

る:社会が押し付けてくる「勝ち負け」「強弱」の関係が、本当なのか?と。

ガ:SMは政治のパロディやねんな。

る:よくわからないけど、今書いたことに近いのかな?

ガ:そうそれ、それだと思います。そういう政治的な度量衡を持っている人だけがSMにはまるのではございませんこと?

<選ぶ側と選ばれる側>

る:男にセックスの主導権があって、女はそこで良い男に選んでもらう努力をせよ、ていうのは誰かが押し付けた幻想で、本当は無いんじゃないのか?

ガ:ぼくもそれ幻想だとは思うの。逆に男性側からすればね、きっと一所懸命勉強して良い大学に入ったりバンドなりなんなりやってみたりして、自分なりに良い女に選んでもらう努力をして、ある日突然「君には若さと才能があるわ、私はそれを求めているの」ってどこか綺麗なお姉さんに筆下ろししてもらう……そんな妄想をしてみたけれど、そんな女どこにもいねえよ!いたとしても少なすぎるよ!とかね(笑)

る:男たちがネットで騒ぐ「良いビッチと悪いビッチ」だの、「彼女がメンヘラだった」だのを読むと、選ぶどころか男は女に酷い目に遭わされてばかりに見える。

ガ:なんだろな、あれは。見るたびにみんな楽しそうですね、と思ふ。

る:女に振り回されてるし、女は男を振り回すことで自分に主導権があることを思い出そうとしてる気もする。そんなもの、思い出さなくても普通にあるんだけど、男も女も世間が押し付けた幻想のルールを信じてるから、そこから逃れて自分が欲しいものを得るために「外道」になる……のか?

ガ:ああーなんだろう、なんつーか、選ぶ側はね、男であれ女であれ、少し自分より下の立場のものを求めるんじゃないのかね。だから、その選ぶ選ばれる価値観においては、あんま努力しない人のほうがウケがいいのかもしれませんね。おれなんか専業主夫志望なんだけれどなあ……(笑)。

る:そうそう、自分より少し目下の女じゃないとって男性は多いね。でも逆に、憧れの女性と付き合おう&#12316;ってストレートに行く人もそれなりにいる。高嶺の花の方が落としやすいの法則。

ガ:努力してる人はあまりウケてないので、実はおとしやすいという……。

る:努力してる人も、別に男に選んで欲しくて努力してるわけじゃないから、努力してることが非モテに繋がるのは盲点!というか、普通に困るよね。

ガ:まあこればっかりは、結構人間の脳のシステムというか、根本的なところに因っているようなどうしようもないような気もする。努力してない自分を愛せないから努力してるだけなのに、それによって男性から敬遠される、こともある、……なんて。

ガ:まあなんだかぼくは多分自分は選ばれることに向いてないタイプなんだろうということを早々に理解して(要するに「モテ」ないタイプね)、選ぶ側に回ることにしてもう十年位。ソッチのほうが手っ取り早いし全然うまくいくけど、選ばれる側に未だに憧れる……白馬にのったお姫様カモン……。

る:現実のモテ女性の多くは、努力しまくった結果「そんな努力してないし賢くもないけど、男に恥はかかせない程度に全体はソツなくこなし、男の目の届かないとこで自分の人生はちゃんと全うする」ことが出来る女になるので、怖い。

ガ:怖えよなんだそれ!超人かよ(笑)てか都市伝説じゃないのか?そういう風説の流布が俗にいう干物女性を増殖させてるのではないか?

る:心から男性に人間としての尊厳を見いださないタイプのモテ女。

ガ:(笑)

る:干物女は逆だよ。

ガ:こういうモテ女性の不可能性、が、干物になるしかないという決意を……。

る:フェミニズムが考えるべき一番大きな問題じゃないかなと思うよ。

ガ:うん。なんつーかそれ

る:不可能性?

ガ:だってそんな女性像、無理でしょ?出来る人いるのか(笑)。

る:世の「素敵な奥様」は全員コレだと思ってるよ。

ガ:まじかよ なんだよあいつら超サイヤ人かよ!てかそんな女キモくて男が誰も寄り付かない気がするが……(笑)。

る:自分の夫を金とステータスのための看板としてしか見ないで、男からは可愛くて都合の良いお飾りとして重宝されるように振る舞い、自分と自分の子ども、自分の親の利益だけを守る。という「良妻賢母」、そんな珍しくないタイプだと思うよ。

ガ:なんだかこの女性像はむしろ女性誌とか女性達自身によって作られた究極の女性像で、男性からの意見が全く入ってないような……(笑)。

る:もちろんそうだよ。男に愛とか人間性とか求めるな!という。

ガ:なるほど……!たしかにそうか、そうだな……。

る:男には男の世界があるように、女には女の世界がある。

ガ:なんつーか、話が微妙にそれるかもしれないが、おれが性的に異常(アブノーマル)なことを、現実に自分がキモがったり「女性はキモがるよそれ」というのは、圧倒的に男の人なんだよ。女の人で、性的な異常性を実際キモがってきた人ってほぼいない。まあ内心は知らんけど(笑)。

る:ほほお~。

ガ:いや、なんか男は男で焦点がズレてるんだよな。男がエロいのは絶対に女の子にキモがられる、みたいな抑圧がやっぱすごいのよね。

る:女は、かなりエグいことも受け入れられる。
そうなんです。男たちの方がずっとナイーブ。男のほうがずっと潔癖。そこに気づかないんだな。男社会に居ると。

ガ:(中略)おれはさ、自分が性的に異常であることを公言することで、少しはその誤解だらけの男社会を、風通しよくできるかな、って思った。

る:その点では私にとってはかなり十分に機能したよ!

ガ:ほんと!?

る:女だけど!(笑)ガ:ならすげえ嬉しい。(笑)女だけど!(笑)いや、ありがとう。本当嬉しい。ほんと男社会って錯誤と固定観念に囚われててガチガチだからな、まあ女社会もそうなのかもしれないが。

る:(ガンディくんが)性のあり方は、生き方と同じく千差万別だってことを身体張って示してくれたのはすごい貴重だよ。
それもどっかの知らない人でなくてよく知ってる身近な人ってのはデカイ!

<ガンディのカミングアウト>

ガ:いやなんかあれはさ、「悲鳴」っておれ、最初のころ客席に背中向けてギターひいてたんだが、知り合いの女王様に連れられてハプバー行ったら……ってこれ話したっけ?(笑)る:ハプバーの話は知らん

ガ:あああ、あいや、ハプバー行って、なんか突然「今からこのコに公開オナニーさせます!」って言われて、女王様が「今日生理中の人!」って言ってお客さんの中で生理中の人からナプキンもらいはじめてそれ口の中つめこまれてステージ上でオナニーさせられたんだけども……射精した後、賢者の自省タイムがやってきたタイミングで、観客の皆さんからすごい拍手と喝采をいただきまして(笑)。

る:うおー!(感動)

ガ:カウンターに座っていた老夫婦とかにお酒とかおごってもらったり、なんかお忍びで来てたモデルの女の人とかに「どいつもこいつもヤりたいだけのつまんない男ばかりで、私は君みたいな漢(おとこ)に会うためにここに来たんだ!」って握手求められたり、そういう経験があって。それがあってからステージで客のほうを向いて、目をおもいっきり見開きながら歌うことができるようになったの。それで、なんか、その流れで 少しでも何か、自分も世界も変わるならと思って……公言するようになったの。

る:そのタイミングで清野とおる先生に会ったの?(清野とおるの漫画の中でガンディが本名で紹介され、その半生と性癖が克明に描かれ、彼の性癖を知らなかった周辺を騒然とさせた。)

ガ:ああ、それはずーーーっと後。公言するようになってしばーらくたってから。

る:そのモデルの人は白馬に乗った姫ではなかったの?

ガ:ああ、いや、なんか結構有名な雑誌のモデルやってるって言ってたんだけれども、忘れてしまった。う~んと……。

る:興味ねーのかよ~(笑)。

ガ:なんか呆然としてたしなあ……(笑)。

る:(女性から)選ばれても、そんな調子でボンヤリしてたんじゃないの?常に。

ガ:そうなのか?いや、わからん。もっと強引に!!!!!

る:白馬にのった姫をスルー

ガ:壁ドンとかして!!言葉で言わなきゃわからないモン!!!

る:それ干物女(ってか待ち受け女)の発想!

ガ:なるほど……(笑)。

<セックスの知識が共有されない日本>

る:(そういう中で)anan は姉であり母親的な役割をしてると思う。すでに今の団塊の世代くらいから性の話は断絶されてる気がする。

ガ: anan のよくないと思うところはセックス特集で平均値を割り出すところ。

る:平均を求めるのが日本人やがな~(笑)。

ガ:「みんながどうしてるか」とか考えたら絶対セックスなんてできない。性って極私的なものだもの。

る:最近ビックリしたのが、「可愛さ平均値をめざそう!」みたいな見出しあって、

ガ:すげーな(笑)。

る:「可愛くなりたい」でなくて「平均でありたい」の欲望の方が強いのが日本人なんだなーと。変態だなと。

ガ:逆に変態だよね(笑)。

(平均的でありたいだけで、実際にはセックスをしたくてしてるという人は少ないんじゃないか、という話題から)

ガ:あのさ、やっぱさ 自分の欲望が何か、というのが 一番根源的な問だと思うんだよね。

る:フェミニズムとしては、まず欲望と向き合うこと、そこから本当の生き方を探ることが女性解放だと思うのです。

ガ:本当だ。というか、人間の解放だとおもう。だれも自分の欲望がわからないのだもの 村崎百郎が言ってたけれど、レイプだろうが殺人だろうが、自分の欲望が分かってるやつは、それだけでもう、救われてる、って、それひどいけど真理だなと思うんだわ。

る:欲望を封じ込め、感情を封じ込め、社会的な安定と平穏だけを目標に、家族に対しても人間性というものを求めず、平均的であるための金とステータスのみを求める。それを正しくて真面目でちゃんとした社会人だと、善良な市民だと言うこの社会が異常。

ガ:なんだろうな、最初の、最近のテク偏重の話に通じるものがあるな

る:社会が求めるスタイルとか、型に合わせて、そこから自分の欲望に添わせていきたいって考え方がテク偏重に通じるのかな?

ガ:むしろ欲望に麻痺してんじゃないか。
(中略)

ガ:セックスはやっぱどうしても日常からの逸脱なので、それを日常に政治的に回収しようとするのは不可能だしして欲しくないわね。あらなぜかおねぇ言葉。あとずーっと思ってることなんだけどさ、セックスに至るまでの物語って、なかなかないよね。漫画でも小説でも。これ、モテキ単行本の裏表紙に描いてあったネタなんだけどさ、物語って「それからなんとなく俺たちは付き合うようになり……」みたいな感じで回収されてたりしてさ、「なんとなく!ってなんだよ!!そこが知りたいのに!!」って泣く。

る:セックスにいたるまでの物語、あるでしょ。少女コミックとかはほとんどそれじゃないかな。

ガ:少女漫画のあれは、完全に男がロボットで、感情も何もないバケモノだから、本当は心臓がバクバクしてたり、パンツ脱ぐ前にチンコの皮むかないと包茎がばれるなとか、パンツが今日は白いブリーフだ、なぜこんな日に白いブリーフはいた、そもそもなぜ白いブリーフを持っているんだ、ああ、母さんがイオンで買ったからだ、もう母さんにパンツを買ってもらうのはよそうとか、そういう現実がさっぱり抜け落ちてるので。

る:少女コミックは女性向けの紙のAVだから。

ガ:そう、AV。 セックスに至るまでの【フィクションの】物語。(中略)なんつーかさ、セックスに至るまでの男って、その、選ぶ側という、一般通念に従うとしても、選ぶ側 である以上失敗だらけだし恥ずかしすぎる情けなくて思い出したくもないことだらけだし、それを全部スルーされてしまったら、途方に暮れるよね。

る:実は男性の多くが1番触れたくない問題なのかもしれない。だから描かれないし、描けないのでは……。

ガ:ああー……そうなのか、沽券に関わるというか。選ぶ側は絶対に情けなくなるからな。

る:物語に昇華する度量が、足りない。描いた端から、作者自身の恥部と言える部分が露呈されてくわけだし。

ガ:やっぱ基本的に表現て、恥ずかしいものなのだよな。

る:それを受け止めながら創作し発表しよう、というのは革命的な意志がなければ無理だわなー。

ガ:(性も表現も)恥ずかしいし弱いから素敵なのか。

る:そうだね。人間らしさというか、魅力だ。でも、近代社会は人間性を否定してるから、弱さを受け入れられなくて、このような現状に。

ガ:うん。表現されると、弱さじゃなくなっちゃうっていう問題もあるよね その、ぼく変態ですってことを受け入れた直後は確かに恥ずかしいんだが今なんとも思わないんだもの。

る:伝えるべきは弱さなんだけど、伝えるためには強さが必要……。あ、そっちか、なるほど。

ガ:そう、無意識が意識化されてしまったというか。だからもう今はどうでもよくて。

る:隠してる間しか、弱さは弱さとして機能しないからね。

ガ:そう、「なんか論点をずらしただけなんじゃないのかコレは」とか思ったりして。本当に言いたいことは決して言えないんじゃないかと思ったりもして。

る:でもそんな弱みにつけこんでAV作って金儲けしたいのう。ガンディはその弱みにつけこんでエロ漫画で金を稼ぐのだ。

ガ: AV製作はすごくやりたいけどね。だいたいさ、いつも思うんだけど日本のAVって女ばっかり映っててキモいんだよ。洋モノはそこらへん男女平等でリアリティを感じるんだけどな。

<内なる異性>

(少コミの話で「快感フレーズ」の話題に。)

ガ:やっぱ、圧倒的に上の立場の男性に、平凡な女性が、「なぜか」「理由もなく」選ばれる、というのがイイのか?

る:今、レビュー読んだが、「平凡な私」の才能を見出される、引き出されるってのがイイらしいっ!

ガ:ふむ、おれだって圧倒的に立場が上の女性に選ばれて壁ドンされたいものだがねえ。ああ、なるほど、そう考えるとおれの中にも処女心があるわけか。

る:すべての人は異性性を内包してる。

ガ:正論。

る:私には童貞マインドがあり、なおかつ爺マインドもある。

ガ:異性性の内包率が高い人じゃないと友達にならない気がする……男女問わず。

る:おもしろい話たくさんできたな!これ全部残しておいて何か出したいわ。

ガ:どーぞどーぞ(笑)。今度録音しながら酒でも飲むかね。

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